食事は食べて楽しむのはもちろん、見て楽しめるのも食欲を増進させるのにとても有効な手段です。
人の五感(視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚)のうち、視覚は実に全体の80%以上を占めるといいますから、料理の見た目や色あいがいかに重要かがわかります。
年齢を重ねると、視力の低下が始まり、視野も全体的に狭くなっていくといわれています。
老人性白内障を患ったりすればなおさらで、主にはものが黄みがかって見えるため、色の認識にもずれが生じます。
こうしたことも含め、高齢者向けの料理は彩りを意識的に工夫する必要があるといえるでしょう。
ただし、色彩だけにとらわれると栄養のバランスが崩れる場合があります。
通年手に入る食材を、赤・緑・白・黒という枠で分類して組み合わせるのも一手です。
例えば赤色(橙も含)なら、りんご・みかん・トマト・人参・さけ・ハム、緑色ならほうれん草・ブロッコリー・ピーマン・キャベツ、白はご飯・ヨーグルト・チーズ・たまねぎ・大豆・じゃがいも・さわら、黒色ならナス・かぼちゃ・わかめ・ごぼう・ぶどうといった感じです。
果物や野菜は、旬のものを取り入れることでコストカットできる上に美味しくいただけるので、季節のものに敏感でありたいものです。
料理の見た目は、器や盛り付けを工夫すると良いでしょう。
そういわれるとどうしたらいいのかわからないという人も多いと思いますが、街の和食屋さんなどのショーケースや本などを参考にすると良いと思います。
ちなみに私の勤務するデイサービスでは、小皿を多くしてみたり、器の大きさを明らかに変えたりなどの工夫をしています。
盛り付けの工夫としては、刺し身のように薄くて枚数があるものはずらして盛り付けたり、おひたしなどを小山のように中央を高く盛り上げるような形にするのがおすすめです。
また個々の体や口腔状態によっては、噛む力や飲み込む力が低下している場合もあります。
そのような場合は、適切な大きさに切ったり刻んだりミキサーにかけたりなど調理方法を工夫しますが、形を変えるとどうしても見た目にも影響が出てきます。
なるべく原型に近い形に盛り付けしたり成形したりなどし、食欲を失わないように配慮したいところです。
日本は季節行事が多い国で、行事にちなんだ料理が存在する場合もあります。
高齢者の方々は、古き良き日本のしきたりや行事を大事に生きてこられた世代だと思うので、季節行事を意識した献立を用意するのも良いでしょう。
行事にちなんだ料理は、食べる楽しみはもちろん思い出話に花が咲くこともあり、脳に刺激を与えることにもなります。