食べ物や飲み物を飲み込むことを嚥下(えんげ)といいます。

若くて健康な時は、当たり前のようにスムーズに物を飲み込むまでが出来ますが、年を重ねると、口の周り、舌、首の筋肉が弱るため嚥下機能が低下してしまいます。
嚥下機能の低下は誤嚥を招きやすくなり、誤嚥は肺炎や最悪な場合は死に繋がる事もあります。

誤嚥を防ぐ一手として、食前に嚥下体操をする事は、嚥下障害や事故防止に非常に有効です。
デイサービスなどの施設では、食事の時間が近くなると、職員が誘導する形で、利用者さんと一緒に嚥下体操をするのが常態化しています。
特別な設備や知識がなくても出来るので、在宅で高齢者の食事介助をされている方も、食前に嚥下体操を取り入れるのがおすすめです。

私が勤めるデイサービスでは、まず着席した状態で体を動かす体操をして、引き続き嚥下体操を行うという一連を習慣化しているので、ちょっとご紹介します。

着席したまま体を動かす体操は、まず首→肩→腕→腰→→膝→足首→足と、頭の上の方から下に向かって順にほぐしていきます。
着席したままでできるので、足の弱い方でも車椅子使用の方でも参加ができます。

嚥下体操は、まず頬を手指でマッサージ、耳下腺、舌下腺、顎下腺のツボ押し、舌を上下左右に出す舌の運動、舌で口腔内をなぞる、頬を思い切り膨らませる(両方と片方ずつセット)、発声です。

発声は、あ・い・う・え・おを大きな声で発声するのと、嚥下の時に使う筋肉と似ているというわれる発声「ぱ・た・か・ら」をいろんなパターンを組み合わせています。

「ぱ」は、唇をしっかり閉じるための運動で、食べこぼしをへらすことができます。
「た」は、舌を上顎にしっかりつけるための運動で、ものを噛んだり飲み込んだりする時に必要な動きと一緒です。
「か」は、喉の奥に力をいれるための運動です。
「ら」は、発声時に舌が一瞬丸くなり前歯に付きます。舌がスムーズに動いて、食べ物を奥へ送り込み飲み込むための筋肉運動です。

童謡などの歌のリズムに合わせて、歌詞をぱたからで歌う、簡単な早口言葉は利用者さんも楽しみながら参加できるのが良いところです。

嚥下体操の発声は「ぱたから」を取り入れている施設が多いかと思いますが、「あいうべ体操」という嚥下体操もあります。
あいうべ体操は、嚥下のための筋肉を鍛えるプラス鼻呼吸も鍛えることができます。

運動とは違いますが、食後の口腔ケアも衛生状態を保ち病気を防ぐだけでなく、大きく口を開けたりブラシや指で刺激を与えることが結果的に口周りの筋力を鍛えることにもなるので、個々の事情があるとは思いますが、出来る限り習慣化して取り入れましょう。